母が『かりもり漬け』を漬けています。長年ずーっと漬けています。祖母も漬けていたし、私は会ったことがないけど曽祖母も漬けていたそうです。
かりもり漬けは愛知県では古くから続く伝統的な漬物で、昔は近所の誰でも漬けていたそうです。


この漬物は母から引き継ぐと決めています。子どもが好きだし、父母には必需品だし、私はかりもり漬けを漬けた後の漬け床を利用して作る数の子の粕漬けが大好き❤
かりもり漬けを漬けた後の漬け床は、捨てずに再利用します。漬け床は酒粕と砂糖で作ります。かりもり漬けは塩で下漬けして水気を抜いたかりもりを漬けるので、漬け床にはかりもりの風味➕塩分も加わります。捨てたらもったいない。味のついた漬け床を再利用して、色々漬けて、使い倒し、最終的には生ゴミキエーロくん(黒土使用のコンポスト的なもの)に入れて、栄養たっぷりの土に帰して、庭木の根元にまいて循環させます。気持ちいい!


私の好きな数の子の粕漬け❤️おせち料理の時期に仕込みます。瓢亭のお正月料理数の子のみりん粕漬けとして本に紹介されていたレシピを参考にしました。
冷蔵庫のスペース節約のため、家庭用真空パック機で小分けにパックして漬け込み保存しています。本には冷蔵庫で一ヶ月くらい保存できると書かれていますが、私はチビチビ半年以上かけて食べています。よく漬かった方が好き。






自家製のかりもり漬けは、完全無添加💯👍市販品では、無添加の漬物ってなかなか無いのです。ほんとに。
漬け上がったかりもり漬けを取り出した後の粕床で、夏の盛りにきゅうりを漬けるのも美味しいです。きゅうりは最盛期には激安で売られますし、畑をやってる方は大量に収穫されますよね。そういうタイミングに漬けます。きゅうりは小さいので、比較的早く漬かります。うちは大体2ヶ月漬けた位から食べます。かりもりは初夏に出回って漬けるので、まだ漬かっていません。かりもりは大きくて固くて身が分厚いので、漬かるのに時間がかかるのです。昨夏漬けたかりもりが残り少なくなりかけていて、この夏漬けたばかりのかりもりはまだ漬けてる最中の時期に、きゅうりの粕漬けが漬かって、食べ始めるというわけです。生のきゅうりとも違うし、なかなかいいです。


お冷やご飯にきゅうりの粕漬けとぶぶあられかけて冷茶注いだお茶漬けです。小さな氷のカケラも少し。酷暑の盛りに食べると最高に美味しい。
単にかりもり漬けだけ食べてもおいしいし、刻んでお茶漬けの脇役にしても良い味出すんだよね。。


うむむ。海苔がぶわッと広がって具の全体像が見えにくいなあ。

お茶をかける前の写真です。これならよく見えますね。刻んだかりもり漬けは丼上方、白飯の下というか丼の底の方にチラッと見えてます。白飯、焼き鮭、梅干し、わさび、焼き海苔、ぶぶあられ、黒胡麻、きゅうり粕漬け、刻みかりもり漬け。
粕漬けが加わると、奥行きが増すというか。。お茶漬けの味と香りが複雑になり滋味深いものになります。
さて、かりもり漬けの作り方〜

↑母のメモです。漬物用の酒かすは一袋4キロで売られているので、それに合わせてありますね。
①かりもり、粗塩、酒かす(漬物用)、砂糖。漬ける容器と漬物石、また、丈夫な袋(ジップロックとか)でもいいです。用意する。
②かりもりを半割りに切り、中のタネを出して、ツルツルにならすように丁寧に掃除する。この作業は大事。うちでは、最終局面になると、キレイに洗ったコインで丁寧にならします。鋭利なものではギザギザになってうまくいきません。鈍い厚みのスプーンでもやってみましたが、なぜかうまくいきません。コインが最適。




③塩漬け
かりもりの種子を取り除いたくぼみに粗塩を入れます。



減塩で作ってます。昔は『船一杯』という表現をしていたそうですから、この窪みに満タンに塩を入れていたのでしょう。保存性は高まりますね。
④重しを乗せて一晩置いて水出しした後、水気を拭いて2、3時間乾かす

水分が残っていると腐敗するし、粕床がべちょべちょになってしまいます。注意して清潔に扱い、乾かします。うっかり水道水で洗い流したりしないように。
昔は塩分濃度高めで塩漬けしていたし、今ほど地球が温暖化していなくて気温が低めだったので、塩漬け→乾かして→粕床に漬ける の手順で(常温で漬けても)無事に美味しく出来上がったのだろうと思います。知多半島は温暖な地域ですが、漬物樽か何かに漬けて、常温に置いといて大丈夫だったのです。20年くらい前から従来のやり方が通用しなくなり『失敗』するようになったそうです。その頃に、母は知り合いの漬物名人の方に聞いて、冷蔵庫で漬けるようになりました。
水気を切ったかりもりを一つ一つ35度の焼酎で拭いてから粕床に漬けて常温で置いとく方もいらっしゃると聞きました。その方はいまだに常温でも大丈夫なのです。かりもりの塩漬けの塩分量や置き場所の状況によっても左右されることでしょうね。また、母は酸味の出たものは嫌いなので、我が家のかりもり漬けには酸味は全くありませんが、市販されてるかりもり漬けを食べてみると、結構酸味のあるものも売られています。多少の酸味は気にならない方もいるでしょうし、むしろ酸味が好きな方もいるでしょう。
自家製の漬物は自分や家族の好みに合わせて作ればいい。それが楽しさでもあるのだから。
⑤酒かすと砂糖をよく混ぜて粕床を作り、かりもりを漬ける
漬物用の酒かす↓こんな形状で売られています。




お砂糖とよく混ぜた酒粕をかりもりにたっぷりとまとわせて、丈夫な袋に入れ、空気を抜いてパチンと止めています。この袋は家庭用真空パック機用のもので、本当は真空パックしたかったのですが、酒かすのドロドロが袋の上の方まで付いちゃったので、パックできなかった。
このまま冷蔵庫の野菜室の底にそっとしまっておきます。
いつまで?
うちは前年に漬けたかりもりが無くなって、次が食べたいなぁと思うと、野菜室の底から取り出して、端っこだけ少し切って味見します。おいしい🩷と思ったら、丸ごと一つ取り出して食べて、まだ漬かりが足りないと思ったら、そのまましばらく漬けておきます。自分で漬けて自分で食べるのですから。自分がおいしい風にやってみればいいのです。
かりもりと一口に言っても、大きいの小さいの、身が厚いの薄いの、色々ありますし。好みも人それぞれですから。
ただ、考え方として。。
塩漬けしたかりもりを酒粕と砂糖の床に漬けますから、時間とともにかりもりに染み込んだ塩気が粕床に抜けていくと同時に、酒粕と砂糖の甘さがかりもりに入って、おいしい味になるんです。
漬かり足りない時、かりもりはまだ塩気が抜けきらなくて塩辛い。よく漬かってくれば塩気が抜けてちょうど良い塩梅になります。
あと、うちでは母がかりもりを粕床から取り出した後、流水できれいに粕を洗い流します。水気を丁寧に拭いてから食べやすく包丁で切って保存容器に入れて冷蔵庫へ。水で洗うと悪くなりやすいので、一度に取り出すかりもり漬けの量は最小限の半割り一つです。
市販されてる酒粕漬けの多くは、粕を洗い流さないでください、と書かれています。母はスッキリした味わいを好む人で、何でも洗い流したり茹でこぼしたりする人なので、かりもり漬けも長年そんな風にしてきたのかもしれません。
かりもりを漬けた後の粕床を利用して、胡瓜を漬ける時、かりもりと同様の手順を踏みますが、きゅうりはかりもりより小さく細いので、早く漬かります。一ヶ月くらいで塩気が抜けて、いい塩梅になり、おいしく食べることができます。だから、かりもり漬けも本当は2、3ヶ月で漬かっているのかもしれないですが、うちは前年のかりもり漬けが無くなってからしか新たなかりもり漬けを取り出さないので、そのくらいの時期の漬かり具合って、正直、わからないんです。母の話では、漬物名人の知り合いが秋口くらいからその年のかりもり漬けを食べてると言ってた、と言いますから、多分、大丈夫なのでしょう。その方も今はもう90歳を超える高齢で、衰えていらっしゃるので、お尋ねすることもできませんが、大変にお料理上手な方でした。かりもり漬けも(私は食べたことがありませんが)母の話では非常においしく漬けられていたそうです。うちは大体、真冬から春先に前年のかりもり漬けが無くなるので、それくらいに初めてその年の夏に漬けたかりもり漬けを取り出して味見します。一つづつ大事に取り出して、残りはしっかりと漬けたまま、冷蔵庫にしまっておきます。一つづつ、一つづつです。
⑥実はもっと丁寧な漬け方があります。そっちが本物。
これだけ書いてきた挙句、ひっくり返すようですみませんが。現在うちが漬けてる漬け方は本式じゃなくて、手順一つ省略の簡易版なんです。母は長年本式の漬け方で漬けていたけど、漬け変える時期がおせち料理の準備と重なることもあり、しんどくなったそうです。正直、簡易版でもなかなかめんどくさいのです。普段の家事にプラスアルファで加わるものですから。梅仕事、栗仕事みたいなもので、かりもり仕事です。
本式のやり方は、⑤の時に酒粕だけで(砂糖は入れず)漬けます。それを11〜12月くらいに一度全部取り出して、⑤で書いたように砂糖と酒粕(新たな酒粕です)を混ぜた粕床に漬けるんです。
手間も酒粕も倍量です。考えてみると、船一杯の多めの塩で漬けたかりもりを一度目に酒粕だけで漬けてる時期は暑い時期です。常温に置いといても、悪くならずに夏越しできるでしょうし、そこで一度塩気が抜けるから、塩梅も良くなるでしょう。そうやって、手間をかけて漬けたかりもり漬けは黒々と立派でおいしくなるのでしょうね。市販されてる粕漬けの中で、時々目ん玉飛びでるほど高価でめちゃんこおいしいものがあります。
私はこの時↓に買って食べた築地唯一の無添加漬物(奇しくもかりもり漬け)が私史上最高に美味しかった!この店に置かれていたかりもり漬けの中でも、無添加なものは最上級の品、その一品だけでした。下位の品たちは無添加ではなかったんです。無添加って、家庭では簡単にやれることだけど、市販品となるとハードル高いのですね。
一体どうしてこんなに高いのか。そりゃあ、やっぱり理由があることで、そういうのって自分で漬けてみたらよくわかります。ほんとに高いなあ!と思うけど、納得する。
母はかつてご近所に幾人かいた漬物名人の方々からいただいたかりもり漬けの中に、そういう絶品があったと言います。黒々と立派で良い香りがして滋味深くて。。お料理上手な方々は、自然と工夫がいいから、長い歳月の間にその方なりの反省と工夫が積み上がって、さらに一層磨かれて、おいしくなっていったことでしょう。無添加のおいしい漬物は、家庭で作ることができるし、家庭で作れば粕床を年間通じて様々に使い回すことができる。使い回して、使い倒すから、経済効率もいいと思います。
肉や魚も漬けています。西京焼きと似たようなことで、酒粕漬け風味の味で食べたいな、と思ったら、漬けて焼いて食べます。数日漬けてから焼いても大丈夫だし、数時間漬けただけの浅漬けでもいいし。肉や魚に粕床がめりこんでくっついてると嫌だな、焦げやすいし、と思うなら、ガーゼに包んで漬けます。めんどくさい時はそのままぐちゃぐちゃと漬けて、焼く前に手指でこそぎ取ります。

↑今年(2025年)は秋刀魚が豊漁。倍量買って、その日は塩焼きで食べ、半量は粕漬けにしました。10日後、粕漬けの秋刀魚(写真の)を食べました。さっぱりしつつ風味豊かでおいしい。
生肉や生魚を漬けた後の粕床は(状況によっては数回使いますが)もういいかな〜という気持ちになるので、そこらへんで、粕床を先に書いた生ゴミキエーロくんに入れて土に返します。